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鬼平犯科帳(四)

 ★★★★★★★★★★

 

鬼平犯科帳〈4〉 (文春文庫)

 読了19冊目。

 うーん、我ながら遅すぎる、このままのペースでは年内一〇〇冊は無理かも……。

 それはさておく。

 実は私、この本を間違えて二冊買ってしまった。
 以前買っておいたのに、その事を完璧に忘れていて全く同じ本をまたレジに運んでしまったのだった(もちろん、未読のまま本棚に仕舞っていた)。

 本日、読み終えて、本棚に仕舞おうとしてその事に気付いた。

 それでも全然腹が立たないくらいに、私は、『鬼平犯科帳』の世界に魅せられてしまっている。

「以下引用」

 或朝のことだが……。
 役宅の門番が、
「このようなものが、御門前に落ちておりましたが……」
 と細長い、小さな桐の箱をとどけてきた。
 箱は美しいむらさきの紐でむすばれてい、ふたの表に〔長谷川平蔵様〕と、みごとな筆跡でしたためられてあった。
(なんであろうか……?)
 平蔵がふたをひらいて見ると、中に紙片が一枚、そこに、
「お見まわり、御苦労」
 と、書いてある。
(あの賊の仕わざだな)
 と、平蔵はおもった。
 賊どもが平蔵をあざ笑っていること、明白であった。
 やはり、密告者がいたのだ。
 いま実行している臨機応変の巡回予定を、賊どもは知っているらしい。
 なればこそ鳴りをしずめ、火盗改メの苦労を嘲笑しているのだ。
 平蔵は、ここに至って、ついに、密告者が密偵たちの中にいるのではなく、自分の部下の中に、
(いる!!)
 と直感せざるを得なかった。
 だが、長谷川平蔵ほどの男でも、
(では、だれが怪しいのだ?)
 となると、かいもく見当がつかなくなってくる。
 部下の与力・同心たちはおろか、密偵に対しても、平蔵は全幅の信頼をよせているのだ。この〔信頼の目〕が曇ったときこそ、
(おれは御役目を辞さねばならぬ)
 おもいきわめている平蔵であった。
 彼らを信ずることができなくて、〔火盗改メ〕がどうしてつとまろうか。
 平蔵は、賊がよこした嘲笑の手紙のことを、だれにも語らなかった。

【『鬼平犯科帳(四)』 池波正太郎〈いけなみ・しょうたろう〉(2000年、文春文庫)】

 面白い。

 この面白さなら、もし、間違って3冊目を買ってしまったとしても、私はまったく腹を立てないだろう。

 万が一、もう一人男児が誕生するような事があれば、私は、我が子に迷わず「平蔵」と名付ける(本気)。  

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