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ロメオ・ダレール 戦禍なき時代を築く

 NHK未来への提言 ロメオ・ダレール―戦禍なき時代を築く

 読了5冊目。

 ロメオ・ダレール氏は1993年、内戦状態が続いていたルワンダに、国連PKO部隊司令官として派遣され停戦監視にあたった。しかし、1994年、1日に数千人の市民が虐殺されるという異常な事態が勃発する。

 ジュノサイドを食い止めるために、ロメオ・ダレール氏は国連本部にファックスを送った。

「異なる部族を抹殺し、内戦を引き起こそうとする動きがある。その計画を阻止するために行動を起こしたい」

 しかし、その3ヵ月前、ソマリアの平和維持活動で18名のアメリカ人兵士が死亡していたために及び腰になっていた国連は、ロメオ・ダレール氏に「その作戦には合意できない。……任務の権限を越えている」という消極的な回答を示す。

 結果、ダレール氏は、わずか100日間で80万人もの人びとが虐殺される現場を目撃することとなる。

 ルワンダから帰国した後、心的外傷後ストレス障害を発症したダレール氏は、2000年にアルコールと薬物の混用で自殺をはかり、公園のベンチで昏睡状態となっているところを発見された。

 2003年、ルワンダでの経験を記した著書『悪魔との握手 ルワンダにおける人道主義の失敗』を発表し、カナダで大ベストセラーとなった。

 伊勢崎賢治氏は、2001年、国連シエラレオネ派遣団国連事務総長副特別代表上級顧問兼DDR(武装解除、動員解除、社会再統合)部長として、内戦後のシエラレオネで武装兵士・ゲリラの武装解除を指揮した。

「以下引用」

伊勢崎 わたしはここで、人間の命の価値について感じていることを話したいと思います。それは、アフリカの人びとの命についてです。率直に言うと、日本は、命を危険にさらしてまでアフリカの紛争に関与しなければならない、とはあまり考えられていません。世論も支持していないようです。あなたは命の価値の重要性をどのように戦略的に訴えていけばよいとお考えですか。

ダレール 難しい問題ですね。わたしは、国連のジュノサイド予防諮問委員会の委員に任命されました。そのメンバーには、緒方貞子さんもいらっしゃいます。わたしは、これからは日本のような国が、人権保護の促進や法の支配の徹底などに、より一層関与していくべきだと提言しています。それは、近代民主主義に移行する際に、あなたの国が作り上げてきた価値観でもあるのです。そのためには、財政的な支援以上のことをしなければならないと思います。先進国に課された責任には、涙や汗、そして血も伴います。それがわたしたちがたどり着いた「保護する責任」という考え方なのです。
 わたしは、この新しい考えを機能させるためにどんなことができるのかを検討するため、現在中堅国家の人たちを集めて作業委員会をつくろうとしています。そうすれば、検討した内容をそれぞれの国に持ち帰り、具体的にどういう貢献ができるのかの検討を始めることができるでしょう。
 あなたは先ほど、日本人はなぜ自分たちがアフリカの人たちと関わらなくてはならないのかと考えていると、言いましたね。では、ルワンダの人たちは日本人に関わらなくてはならないのでしょうか。考えてみればすぐわかることですが、ルワンダから日本に差し出すものは何もありませんね。しかし、日本からルワンダに差し出すものはたくさんあるのです。技術移転や資金援助に限りません。大切なことは、何よりもまずルワンダの人びとも人間であるというこの厳然たる事実に日本の人びとが向き合うことです。ルワンダの子どもも日本の子どももこの地球において同じように重要だということを責任をもって行動で示すことです。これは道徳心の問題です。世界のなかで自らの存在をどう位置づけるかということです。
 資金援助でいいではないか、という声もあるでしょう。しかし、国のあるべき姿を伝え、国の道徳的な規範を取り戻す手助けをすることこそが重要なのです。
 時間はかかるでしょうが、実現は可能です。なぜなら、この人権を大切にするという考えは、これから先、ますます世界中に浸透していくからです。わたしたちはすべて同じ人間で、みな平等なのだという信念は、時間とともに、国際的な、世界的な意思伝達を通して、より一層わたしたちの社会の良心を形づくっていくことになるでしょう。
 わたしたちは、人の権利と可能性が脅かされ、世界中で恐怖がまかり通るさまを目の当たりにしたなら、そこから目をそむけることなどできません。実現するにはあと2世紀かかるかもしれません。しかし、2世紀もすればわたしたちは皆平等だということに気づくことができるのです。そうすれば、摩擦や違いから争いになるということはなくなるのです。それまでには、大勢の人が死に、多くの機会が失われることになるかもしれません。しかし、わたしたちがしっかりと手を携えてゆけば、ゆっくりとした歩みではあっても、人権を守るというわたしたちの考えを進歩させていくことができるのです。

【『ロメオ・ダレール 戦禍なき時代を築く』 ロメオ・ダレール+伊勢崎賢治〈いせざき・けんじ〉(2007年、NHK出版)】

 この書を読んで、それに対して何か言葉を綴ることが出来るほどの、知識も、覚悟も、私は持ち合わせていない。ジュノサイドのことを書物で知り、その事実に対して怒りを感じはするが、ではルワンダのために自らの血を流せるのかと問われれば、私は無言で頭を垂れることしか出来ない。

 自らの生命を賭けて、世界を良くするために戦っている二人の言葉は重い。

 自死を決断させるほどの地獄を乗り越え、2世紀先を見据えて真剣に戦う人間が、同じ時代に生きていることを私は知った。

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コメント

「なぜ、世界はルワンダを救えなかったのか」を読みました。

「戦禍なき時代を築く」では、伊勢崎賢治氏と対談されているんですね。

ぜひ読んでみたいと思いました。

投稿: ETCマンツーマン英会話 | 2014年8月 1日 (金) 22時23分

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