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文章を書くこころ

 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 文章を書くこころ―思いを上手に伝えるために (PHP文庫)

 文章を書くという行為にまつわる本があると、私は反射的に手を伸ばしてしまう。そして読み終わった後、いつもと変わらぬ駄文を性懲りもせずに綴っている。
 しかし、打たれ強い私は、同じような本を見つけるとへこたれずにページをめくって読み出す。

「以下引用」

 学校で ひとクラスをAB二つのグループに分ける。テストをしてAグループには採点した答案を返し、Bグループの答案は見ないでおく。

 そして、Bグループの生徒をひとりひとり先生が呼んで、

「この間のテストはよくできていた」

 とほめる。みんなに同じことを言う。しばらくしてまたテストをする。やはり、採点した答案を返すのはAグループだけ。Bグループには、全員に

「こんどもよくできた」

と言う。こういうことを二、三回繰り返したあとで、テストをし、ABともに採点をしてABそれぞれの平均を出すと、Bグループの方が成績がいい。

 これをピグマリオン効果という。ほめていると、実際に、そのようになる。Bのグループはできたからほめられたのではなく、でたらめにほめられたのだが、それでもきく。実際によくできるようになるから不思議である。ほめられるということは上達や能力を伸ばすのに、たいへん大きな作用を及ぼす。

 ピグマリオンはギリシャ神話でギプロスの王様ということになっている。珍しい王様で彫刻の名手だった。理想の女性を刻んだが、あまりのみごとなできばえに塑像を深く愛するようになった。神にこの彫刻に生命を与えて、結婚させてくださいと懇願した。哀れと思った愛の女神さまアフロディオは彫刻を生きた女人にし、ピグマリオンは彼女と結婚したというのである。

 そこから、願えばかなうことをピグマリオン効果と言うようになった。

【『文章を書くこころ』 外山滋比古〈とやま・しげひこ〉(1995年、PHP文庫)】

 ピグマリオン効果の説明が非常に中途半端なものになっている。

 この文章では、「褒めれば伸びる」という現象のことを「ピグマリオン効果」と言うのだ、というような説明になってしまっているが、本当は少し違う。

 実際に行われた実験を簡単に説明すると以下の通りになる。

 ある小学校のクラスで、「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と名づけた知能テストが行なわれた。このテストは単なる普通の知能テストであったのだが、クラス担任には、今後数ヶ月の間に成績が伸びてくる学習者を割り出すための検査であるという説明がなされた。

 そして、クラスの生徒を無作為にA、B二つのグループへと分けた上で、担任にはAグループこそが今後、成績が上がるであろう子供たちだと伝えられた。

 その後の学業成績を調べたところ、無作為で分けたA、B二つのグループには明らかな差が生じていた。Aグループの成績が平均で明らかに向上していたのである。

 これはつまり、「人間は期待された通りに成果を出す傾向があることの現れ」であると説明され、そのことを「ピグマリオン効果」と呼ぶ。

 Aグループの成績が上がったことの原因としては、クラス担任がAグループの子供達に対して期待のこもった眼差しを向けたこと、さらに、子供達も期待されていることを意識したためだと主張されている。(ウィキペディア参照)

 以上が「ピグマリオン効果」の簡単なあらましである。
 外山氏の書いた文章は、明らかに間違っている。
 他の部分も、どこかで読んだり聞いたことのある内容ばかりだ。

 この際だから思ったことを、もう一つ書く。

 この人は、どこか「傲慢」である。それを感じさせられた部分を引用しておく。

 外山氏は18世紀のイギリスの貴族、チェスターフィールド伯爵が息子に対してほとんど毎日、人生を教える手紙を書き送ったことを説明し、以下の文章を綴っている。

「以下引用」

 いくらひまでも、用もないのに手紙を書くのは大変な手間である。それが後生にもてはやされる内容をもっているのだから、やはり、この貴族ただのネズミではなかったと言うべきだろう。英文学の歴史でもかならずこの伯爵が登場する。

【『文章を書くこころ』 外山滋比古〈とやま・しげひこ〉(1995年、PHP文庫)】

 私は「傲慢」な人間が大嫌いだ。「傲慢な人間」ほど醜い生き物は無い。

 この人の書籍を紹介するのはこれで二冊目だが、今後、私がこの著者の書を紐解くことは二度と無い。

 

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