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ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記 ⑮

  ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

「以下引用」

 一九九四年四月二十日、まだ子供だった私の心の中で神は死んだのだ。人の教えてくれたところによると、虐殺を生き延びたユダヤ人には不可知論者になる者が多いらしいが、私にはその気持ちがよく分かる。エリ・ヴィーゼルはその著作の中で神が死んだ経緯を語っている。ブナ収容所で、ある日彼は、少年が絞首刑にされるのを目の当たりにした。やせ細っていた少年は、ぶら下がっても死に至らないほど軽く、縄に吊り下がったまま身をよじらせて悶え苦しんでいた。その苦しみはいつまでも続いた。子供だったエリは、居並ぶ人々の間からこんな言葉が何度も漏れてくるのを耳にしたという。

「神様はどこにいらっしゃるのか?」「神はどこにいる?」「神はどこだ?」

 やがて見守っていた人々の中から一つの答えが聞こえてきた。

「神はどこにいるかだって? ここだ。ここにぶら下がってるじゃないか、この絞首台に」

 神はこの少年と共に死んだのか?

【『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』 レヴェリアン・ルラングァ/山田美明[訳](2006年、晋遊舎)】

 私は子供の頃から、神などというものは存在しないと信じている。今は、信じるとか信じないとかの次元ではない。神などというものは、当然、存在しないのだ。当たり前の話である。

 神は少年と共に死んだりなんかしていない。始めから存在しないのだから。人間の歴史の中で、繰り返し、繰り返し、嫌と言うほど「神」の不在は証明されてきた。

 この、『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』を読む限りにおいて、「キリスト教」の「神」は、著者レヴェリアン・ルラングァ氏を苦しめる働きしかしていないようだ。

「以下引用」

 母は最期まであなたのことを信じていました。それはよくご存じでしょう。母がいくら祈っても、私がいくらお願いしても、全能の神であるはずのあなたは指一本たりとも動かすことなく、母を守ろうとしませんでした。私をその乳とあなたの言葉で育ててくれた母は、喉の渇きに苦しみながら死んでいきましたが、あなたは自分のしもべの苦痛さえ和らげようとせず、干からびた母の唇に清水の一滴も注ごうとはしませんでした。その唇は最後の最後まであなたの名を唱え、あなたを褒め称えていたというのに。

【『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』 レヴェリアン・ルラングァ/山田美明[訳](2006年、晋遊舎)】

 もし本当に全能の神がこの宇宙を創りたもうたのならば、もう一度最初から、今度は気合いを入れてやり直すべきだ。それをしようとしないのは、神など端から存在しないからに違いない。

「以下引用」

 あなたには、無垢な人々を救う手さえないのですか?

 自分の子供の不幸も見えないほど目が悪いのですか?

 彼らの叫び声も、助けを求める声も、悲嘆の声も聞こえないほど耳が遠いのですか?

 彼らをずたずたに切り裂こうと襲ってくる汚らわしいやつらを踏み潰す足さえないのですか?

 涙を流す人々と共に、涙を流す心さえ持っていないのですか?

 か弱き者や小さき者を守るはずなのに、ゴキブリたちさえ守ることができないほど無力なのですか?

 つまりあなたは、闇の中にいて盲目の眼差しで私を見つめるだけの無力な神なのですね?

 しかしそんなことはどうでもいいのです。私の心の中では、あなたはもう死んでいるのですから」

【『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』 レヴェリアン・ルラングァ/山田美明[訳](2006年、晋遊舎)】

 これ以上、「神」については語る意味すらも無い。

  

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