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ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記 ⑧

「以下引用」

 人は、自分を殺した者の眼差しを死の道連れにする。

 私の頭蓋骨に向けて刃を振り下ろしたシモン・シボマナの黒い瞳を、決して忘れない。その眼差しは永遠に私の中に刻み込まれた。大人になった今、当時子供だった私の目がその瞳の中に何を読み取ったのかを説明することはできそうにない。決然とした冷酷な態度、焼けるように熱くこみ上げる憎しみ、狂気と理性、集中と神経喪失、これらが奇妙に入り混じったものだったと言えばいいだろうか。

 そのとき私は、悪魔がこの世に存在することを知った。たった今、その瞳と視線を交わしたところだった。

 シボマナはまず、私に寄りかかっていたヴァランスに切りかかった。従弟の血が降りかかる。シボマナが再び鉈を振り上げる。私は反射的に左手で、頭の前、額の辺りを守った。まるで父親に平手打ちを食らわされる時のように。敵が襲いかかってくる。刃が振り下ろされ、私の手首をばっさり切り落とす。左手が後ろに落ちた。温かい濃厚な液体がほとばしる。私はその場にくずおれた。

 シボマナは私を殺したと思ったのか? 後で止めを刺したほうがいいと思ったのか(実際に殺戮がどのように行われるかは、既に強調しておいた通りである。フツ族の男たちは最初の攻撃では傷つけるだけである。そして「体液」と痛みに浸らせておいてから、二回目の攻撃で彼らの言う「仕事」を終えるのである)? シボマナは次の標的に向かった。父である。

【『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』 レヴェリアン・ルラングァ/山田美明[訳](2006年、晋遊舎)】

 悪魔の眼差しを道連れに、百万人のツチ族は死に旅立った。

 悲しいことだ。

 恐ろしいことだ。

 地獄はこの世界にある。そして、それはいつも人間が創り出す。

 ルワンダでは百日間、悪が容赦なく行われた。

 シモン・シボマナには躊躇いがない。虐殺に加わったフツ族の人間は、きっと誰一人、躊躇わず悪魔に魂を売ったのだ。でなければ100万人もの人間を殺す事など出来ない。

「左手が後ろに落ちた」
 
という一文が、現実世界の救いの無さを際立たせる。

 人間の悪意・残虐性の究極の姿がここには描かれている。

 しかし、

 どうか、勇気を出して本書を手に取っていただきたい。

 同じ人間として、人間が行った「ジュノサイドという最極悪」の現実を知って欲しい。本書を読むことで心が落ち込むことを心配しておられる方、どうか、思って欲しい。この本を書いたのは、実際にジュノサイドを生き延びた一人の普通の青年である事を。青年は目の前で大切な家族たちを殺され、自らも片腕と片目を失っている。

 どうか、勇気を出して本書を手に取っていただきたい。

 それは、現実を学ぶということ以外の大きな意味と意義とを持っている。

 本書『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』を読む、という行為は、レヴェリアン・ルラングァ氏の下す「正義の鉄槌」に協力するということでもあるのだ。
 

ルワンダ大虐殺 〜世界で一番悲しい光景を見た青年の手記〜

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