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サはサイエンスのサ

★★★★☆☆☆☆☆☆

サはサイエンスのサ

「サイエンスはあなたを変える! インフルエンザ予防のご認識、日本国憲法の過激な運用法、記憶読み取り装置の可能性など、確かな科学知識と特異な視点から、これまでの思い込みをあっさりとくつがえす、知的冒険に満ちた科学エッセイ集」

 と帯に書かれているのを読み、悩んだ後に購入した。

 表紙の絵が少しね……。

 何とか読了したが、文章が少し読みにくい印象を受けた。

 また、科学の知識が多少ないと良く理解できない内容となっていて、私は少し難しく感じた。

 しかし、第2章に書かれている、82歳で肺がんのために亡くなった父親との、最後の日々に関して綴られた部分には心を惹かれた。

「以下引用」

 ある時は、どうしても聞き分けてくれず、ビルの管理人にかけあって暖房をつけさせろといい出す。そんなの絶対に無理だよ、といっても聞き分けてくれない。それじゃあお前、なにか、人間はみんな、過去に誰かがやったことと同じことしかしちゃいけないのか、やってみなくちゃわからないじゃないかと、妙に説得力のあることをいう。でも、深夜の三時にさすがにそれは無理だよな。

 どんなにいってもわかってくれなくて、喧嘩のようになってしまう。こんなに親不孝な子どもは殴ってやりたいというので、じゃあ殴ってくれといって頭をさし出す。すると、殴れん……おまえ父さんのことが好きなんだろという。ああ、好きだよっていうと、父さんも好きだ、こうしているとどんどん好きになっていく、だって。

 嗚咽というのは、しゃっくりとか、くしゃみの発作みたいなものだ。最初、その衝動につかまると、体が自動的にそのように反応する。でも、猛烈な感情はその刹那だけだ。感情の渦はすぐに収まる。収めることができる。でも、体がする嗚咽の発作は、しばらくは止まらない。鼻もつまっちゃうし。

 まあ、肉体的にはとても大変だったし、毎日のように予想外の事件が起きて、その状態がいつまで続くのか、これから先どうなっていくかなど、まるで見当がつかないなかで日々をしのいでいくのは、けっこうしんどくはあった。もしぼくに子どもがいたら、同じような苦労は決してさせたくないとも思う。しかし、それでもこの、正気でない父と、最後の時間を過ごせたのは心底良かったと感じている。

 あのなんというか濃密な時間の中で、たぶん、正気のままだったら決して見ることはなかったろう、父の人間としての全て、悲しいところ情けないところ小ずるいところから、優しさや理想を求める心や良心といったものまで、すべてをまのあたりにすることができたから。人間ってのはやっぱり面白いもんだよな。

【『サはサイエンスのサ S is for Science』 鹿野 司〈しかの・つかさ〉(2010年、早川書房)】

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