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トレーナーはマル暴刑事(デカ)

 ★★★★★★★☆☆☆

 著者の山下正人氏は、WBC世界バンタム級チャンピオン、長谷川穂積を育てたトレーナーである。

 この人、暴力団対策課の元刑事で、三十代半ばまではボクシングとは縁もゆかりも何ひとつなかったそうだ。

「以下引用」

 人生、生きてみんことには、何も分からん。そんな感じや。

 ごく、ごく平凡な家庭に生まれ、ちっちゃい時は、ただのやんちゃ坊主やった。それから、野球に夢中になった。中学生から硬球を使う、シニアリーグに入り、高校では球児の究極の憧れ、甲子園を目指しとったが、ま、そないな人はごまんとおるんやろう。

 ちょっとばかり変わった経歴いうんは、いつのまにやら刑事になったことやろか。それも、天下の山口組を抱える兵庫県のマル暴デカや。情報を集める役目を仰せつかって、やくざの事務所を飛び回っとった。

【『トレーナーはマル暴刑事(デカ)』 山下正人〈やました・まさと〉(2010年、ベースボールマガジン社新書)】

 ボクシングは多くの男性にとって特別なスポーツだ。統計をとった訳では無いが断言する。

 子供の頃、「あしたのジョー」に夢中になった。

 矢吹ジョー、力石徹はヒーローだった。本気でジョーの髪型にしたいと思って、前髪を伸ばした事もある。もちろん途中で挫折したが……。

 ボクシングには男のロマンがある。

 私はボクシングでは無く、空手の道場に通った。

 練習するとき、「あしたのジョー」の主題歌を心の中で歌った。

「サンドー♪ バックにー♪」というヤツである。

 長谷川穂積は素晴らしいチャンピオンだ。

 本当に強いチャンピオンだと思う。

 そのチャンピオンを育てたのは、ボクシングに関しては殆ど素人同然の元刑事だったというのを知り私は本気で驚いた。

 その真実を知りたい人は、是非本書を手にとって欲しい。

 私の評価は星七つ。

 これは、あくまでも「読み物としての完成度」という意味の評価である。書かれている事の内容が、星七つ、という訳では無い。

 この、山下正人氏はボクシングのトレーナーであって、文章を綴るプロではないという事だ。

 これが、矢沢永吉の「成り上がり」のように「聞き語り」という方法で執筆されていたとすれば、それも腕のいいライターの手によってであるが、傑作になっていたであろう事は間違いない。

 素人同然で、世界チャンピオンを育てた人間の言葉からは、非常に学ぶべきものが多い。
 

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