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全国アホ・バカ分布考 ―はるかなる言葉の旅路―

 ★★★★★★☆☆☆☆
 学生時代の友人Hさんお勧めの二冊目、『全国アホ・バカ分布考 ―はるかなる言葉の旅路―』を読了した。

 テレビのプロデューサー松本修氏が、「探偵ナイトスクープ」というバラエティー番組の中で、「アホ」と「バカ」、そしてこれらと意味を同じくする全国の方言の広がりについて調べることになった。

 やがて、松本氏は、「全国アホ・バカ分布図の完成」という難問に立ち向かっていくことになったのだが、そのことの顛末が、言語学や方言学の学術的な要素もふんだんに取り入れられ、非常に緻密に書かれている。

 こういったものを心の底から楽しむ事が出来る人のことを、本当の意味での「知識人」というのかも知れない。

 勧めてくれたHさんには申し訳ないが、私はどうやら「知識人」ではなかったようで、正直、それなりにしか楽しめなかった。

 あまりにも詳しく書かれ過ぎていて難しいというのが一つ目の理由。

 二つ目の理由を以下に述べる。

 沖縄の「フリムン」の語源が「ふれもの」(気が触れた者)、という差別用語にあるという説を知り、松本氏が調査そのものに対する意欲を失いかけた際の事が書かれていたのであるが、私は、筆者がそこにやや感情的になってこだわる姿勢に疑問を感じてしまったのである。

 折角、お勧めしてくれたのに、Hさん、ごめんなさい。

 私は、「フリムン」の語源が差別用語にあろうと別に構わないのではないか、と単純に思ってしまったのである。

 現在使う人間が、差別のために用いなければ別にいいのではないだろうか。

 ビートたけしが何かの対談の中で、『足の不自由な人間に対して、「何だ、お前なんか車いすがなきゃ、どこにも行けねえじゃねえか」って、面と向かって冗談で言えるような関係性を築いた時に初めて、差別が無くなったと言えるんじゃないか』というニュアンスの事を言っていた。

 私は、人間のありとあらゆる感情の中で最も醜いものが「差別感情」であると思っているが、いたずらに「差別」にこだわりすぎる事に対してはどこか違和感を感じてしまう。

 これは私個人の見解であり、また、その一点だけに本書の主題が置かれているわけでは無いので誤解しないでいただきたい。

 松本氏の研究は、知的好奇心を充分に刺激するものである事は間違いない。また、物を調べる執念、忍耐力、バイタリティーに関しては非常に学ぶべきところも多い。

 それに、あとがきの、「方言」に対する著者の考察には、私も大いに賛成する。

 私の評価では、星六つ。

 Hさん、本当にごめんなさい。

 しかし、これに懲りず、良かったらまたお勧め本を紹介して下さい。

 活字中毒で知的好奇心が旺盛な人にはお勧めの一書である。

【『全国アホ・バカ分布考 ―はるかなる言葉の旅路―』 松本 修〈まつもと・おさむ〉(1996年、新潮文庫)】

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