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ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記 ③

 一九九四年四月二十日午後四時ごろ、ルワンダの中央にあるムギナの丘で、私の家族四三人がマチューテで惨殺されてからというもの、私は平穏という言葉を忘れてしまった。当時十五歳だった私は幸せだった。空が曇っていても、私の心は晴れ渡っていた。しかし、突然、私の存在は、とうてい言葉では言い表せない恐怖にひっくり返されてしまった。なぜそのような恐怖を味わうことになったのか、おそらく死ぬまで理解できないだろう。身体にも、顔にも、記憶の最も鮮やかな部分にも、その傷跡が残っている。死ぬまで一生消えることのない傷。

 しかし、この大虐殺を生き延びたのは私だけではない。私を殺そうとした人間も生きている。その男は、形ばかりの服役を終え、私の生まれ故郷ムギナで気ままに暮らしているというのに、私はと言えば、常に湧き上がってくる復讐への衝動を必死に追い払おうとしている。この黒い獣のような感情が私に食らいつくと、その毒が全身に回って身体が麻痺してしまうからだ。

 内にこもった怒りを収めるには時間がかかる。

 しかし私自身は、憎悪ほどたくましくないのだ。

※マチューテ 「南米で用いられる伐採用の刀」

【『ルワンダ大虐殺 世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』 レヴェリアン・ルラングァ/山田美明[訳](2006年、晋遊舎)】

 家族を目の前で惨殺されたとしら、正常な精神を保っていられる自信は私には無い。

 家族を殺されたら、私は間違いなく復讐の鬼と化す。自分や家族がされたことと同等かそれ以上の残虐を、復讐相手の身に振りかけるためだけに生きることを誓うだろう。

 それも、世界全体を憎みながら。

 こんな私には、世界の平和を願うような資格は無いのかも知れない。しかし、今の私には別の答えは見つけ出せそうに無い。

 この本の著者、レヴェリアン・ルラングァ氏は、どうして、常に湧き上がってくる復讐への衝動を必死に追い払おうとするのだろうか? 

 どうして復讐の衝動に身を任せないのだろうか?

 判らない。何日考えても、どうしてなのかまるで判らない。

 レヴェリアン・ルラングァ氏は、その衝動のことを、「黒い獣のような感情」と表現している。

 まったくもって判らない。

 そして、無条件に、ただただ「凄いと」思う。

  凄い。

 それ以外に言葉は見つけられない。

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