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野蛮人のテーブルマナー「諜報的生活の技術」

  ★★★★★★☆☆☆☆

 ロシア大使館、国際情報局分析第一課などで情報活動に従事し、2002年に鈴木宗男事件に絡む背任容疑で逮捕された佐藤優氏の著書を初めて読んだ。
 

 本書は、著者の体験に基づいた、インテリジェンス技法(諜報技術)について書かれている。
 

 軍事情報以外でインテリジェンス機関が必要とする情報の95~98%は、公開情報で入手できると言われているそうだ。外務省で、「秘(無期限)」や「極秘」の判が押されている秘密情報とほぼ同様の情報を公開情報の中から見つけ出すことができるらしい。
 きっと、それを可能にするためには、膨大な量の活字を読みこなさなければならないだろう。

「以下引用」
 直接関係しないような出来事間の連関に気づくためには本を読むことである。しかし、読み方にコツがある。ぶどうの搾り汁を樽に入れて、数年寝かさなくてはワインにならないのと同じように、本から得た知識は一定期間を経ないと身につかない。この辺を意識しながら、筆者は独自の読書法をとっている。一日、原則として6時間の読書時間をとる。原稿に追われたり、地方への出張があると6時間を確保することは難しいが、最低3時間は読書時間を確保する。その際、現時点の原稿執筆のために必要な本はあえて読まない。そのような本は原稿を書く中で自然と目に触れるようになるからだ。ここでは6ヶ月後くらいに話題になりそうなテーマの本を積極的に集め、読むことにしている。重要な部分をシャープペンで囲み、それをノートに書き写す。あとは、そのまま6ヶ月、どうしても余裕がない場合は3ヶ月、放置する。その期間に知識が発酵して、自分の言葉で本から得た知識を語ることができるようになる。
【『野蛮人のテーブルマナー「諜報的生活の技術」』 佐藤優〈さとう・まさる〉(2009年、講談社)】

 現在は情報活動から身を引いているにも関わらず、著者は一日に6時間を読書に当てている。
 残念ながら私は一日平均で1時間程度だろう。完全に負けた。

「以下引用」
 なぜ、ハレヴィ氏が呼び戻されたのであろうか。それは、ハレヴィ氏がヨルダンのフセイン国王と個人的に強い信頼関係をもっていたからだ。1994年、イスラエルはヨルダンと平和条約を結んだ。実は、この条約が締結できるかは、最後の瞬間まで不透明だった。最後は、当時モサド副長官だったハレヴィ氏が、フセイン国王をトイレに追いかけていき、数分間、文字通り2人だけでトイレに籠もってまとめあげた条約である。ハレヴィ夫婦が訪日したときに、京都のホテルのバーで夜遅く、外交交渉術に関する話をすると、ハレヴィ氏が筆者にこう言った。
「佐藤さん、交渉においては動物行動学(エソロジー)の知識も役に立つ」
「動物行動学ですか。具体的にどういう場面で役に立つのですか」
「動物は、警戒する相手と、一緒に餌を食べることを警戒する。裏返すと、安心できる相手とならば一緒に餌を食べる。意見交換をするときも、極力、会食の機会を増やすことだ。食事でなければ、コーヒーや紅茶に、ちょっとしたケーキやドライフルーツを一緒に食べるだけでもいい。信頼感がずっと深まる」
「それで、エフライムは、僕がテルアビブに行くと、食事時でなくてもパンとチーズやフルーツで歓待してくれるんですね」
「そうだよ。一緒に食事をしながら話をするということはとても重要だ。私たちの仕事は、敵の中に友人を作ることだ。そして、敵と取引しなくてはならない。そのときも動物行動学の知識が役に立つ」
「どういうことですか」
「動物は、敵の前では排泄をしない。案外、気づかないことだが、実はトイレでの交渉で、難しい問題を解決することが、結構ある。ヨルダンとの平和条約も、最後は私とフセイン国王の2人でトイレの中で決めた」
                                             

                      ☆
 

 何か交渉するときは、食事時もしくはトイレの中。この動物行動というものの中で、情報機関が参考にして用いている知識を、もっと他にも知りたくなった。
 

 全体を通して読んでみると、少し専門的過ぎて、実際の生活の中ではあまり参考にはならないような技術の紹介もされている。一般の人間には技術の説明よりも、挿入されているエピソードの方が遙かに面白いだろう。私にはそう感じられた。

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