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人生を料理した男 麻薬の売人からトップシェフへ

  ★★★★★★★☆☆☆

 コカインの密売人だったアフリカ系アメリカ人の、ジェフ・ヘンダーソンは、刑務所の中で料理と出会い人生を変えた。
 

暗黒街の顔役から、全米トップクラスのシェフへ転身した男の、波瀾万丈のサクセス・ストーリーで  ある。

「以下引用」
 一日の講義の終わりを、H氏はいつも次のように締めくくった。「きみたちは銃で脅されて犯罪に及んだわけではない。きみたち自身が選択を行ったのだ」と。しかし、おれはどうしても被害者意識を捨て去れずにいた。まだ自我に目覚めていない段階で、自分の愚かさに気づいていない段階で、犯罪の指南者たちと出会ってしまい、いいように利用されたのだとしたら、やはり被害者と呼べるのではないだろうか。
 とにかく、考える時間はいくらでもあったし、受講生は考えなければならない立場に置かれていた。プログラム修了の条件のひとつは、これまでの人生と、過去に下してきた決断を振り返り、五十ページの回顧録として書きあげること。さらに、出所してから六ヵ月のあいだ、どのように自活してどのように生き抜くかを、五ページの戦略プランにまとめて提出する必要もあった。
 H氏は思索を促すひとつの手段として、“認識:心の作用”の回を利用し、意識下で犯罪行為が正当化される仕組みと、それに対処する方法を受講生に学ばせた。この講義の中で、おれたちはひとりひとり、犯罪に至る心理状況を説明させられた。興味深かったのは、おれを含めた受講生全員が、ムショ送りになったのは自分のせいではないと、言葉巧みな言い逃れに終始したことだった。
 九ヵ月のプログラムが終わるころ、自分が被害者でないと認める受講生は、全体の三分の一に達していて、おれもそのひとりだった。もちろん、若いアフリカ系アメリカ人男性に配られるカードは、若い白人に配られるカードとは差があるだろう。しかし、隣のプレイヤーよりも強く、賢く、鋭くなれるかどうかは、やっぱり自分しだいなのだ。
【『人生を料理した男 麻薬の売人からトップシェフへ』 ジェフ・ヘンダーソン/楡井浩一訳(2008年、アスペクト)】

 大変面白くて一気読みした。

 それにしても世の中は不公平だ。

 人種差別の話ではない。

 若い頃にアウトローな人生を送り、散々、好き勝手なことをして犯罪に手を染めた人間が、社会復帰して成功すると人々は惜しみなく賞賛を送る。おかしな事に、幼い頃から真面目に生き、こつこつと努力して成功した人物よりも高く評価されたりする。

 どちらが偉いだろう?

 もちろん偉いのは後者のコツコツ君に決まっている。

 では、どちらのサクセス・ストーリーを読みたいと思うだろうか?

 私は迷わずに前者イケイケ君の物語に手を伸ばす。

 小さい頃から料理が好きで、真面目一筋で料理学校に通い、苦しい修行にも弱音を吐かず、コツコツと一流のシェフになった人物の自伝があったとしても、あまり面白そうには思えないかも知れない。(書き方にもよると思うが)

 本当に不公平だ。

 若い頃に悪さをやり尽くし、刑務所で料理に目覚めて一流シェフになって、自伝が出版されて映画化の話まで持ち上がっているらしい。帯にウィル・スミス主演で映画化決定! と書かれている。

 まったくもって不公平だ。

「俺も昔は相当なワルでよお……」

 なんて自慢げに話す人のなんて多いことか。

 しかし、世の中の不公平なんかに負けてたまるか! である。

 私は真面目な人間で、運転免許証もゴールドで、犯罪歴は皆無で(小学校の一年生の時に万引きして補導されたことはある)、麻薬なんてものは生まれてこの方見たことも無い。その上、散々に苦労した挙げ句に禁煙までした。

「俺は昔も今も相当なマジメでよお……」

 なのである。

 ハッキリ言って偉いのである。誰が何と言おうと、一度でも裏街道の道を歩んだことのある「ワル経験者」より私は偉いのである。

 だから食ってやる。

 私は今から五年以内にラスベガスに行き、ジェフ・ヘンダーソンの作った料理を食ってやる。それで、「このトリュフ結構美味しいですね」とか、トリュフなんて食ったこと無いけどサラッと言ってやる。

 それをこのブログに必ず書く!

 世の中の不公平を吹き飛ばす、真面目男の決意である。

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