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100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図

  ★★★★★★☆☆☆☆

 本書に書かれているのは、「陰のCIA」と呼ばれる情報機関ストラトフォーの創立者で政治アナリストであるジョージ・フリードマンが、著した21世紀の世界予測である。
 

 過去の歴史、地政学、人口動態、エネルギー問題、各国の経済及び技術力、軍事力などをもとに分析し、驚くべき大胆な予測を(しかし十分な説得力を持って)提示する。

 

 世界戦争や人口動向、技術的変容といったことを詳しく掘り下げる前に、まずわたしの手法について説明しておきたい。つまり、具体的にどのようにして予測を行っているかということだ。たとえばわたしは2050年に戦争が起こると予測しているが、その細部にいたるまで額面通りに受け止めていただかなくても構わない。ただ、この頃の戦争の戦われ方や、アメリカの力の重要性、そしてその力に他国が挑戦する可能性や、その力に挑戦する(または挑戦しない)であろう諸国という点に関しては、是非とも真剣に受け止めていただきたい。そのためには何らかの根拠を示さねばなるまい。アメリカとメキシコが対立し、戦争さえすると言っても、分別ある読者はいぶかしく思われるだろう。わたしがなぜ、そしてどのようにして、こう断定できるのかをはっきりさせておきたい。
 すでに述べた通り、常識的な人には未来を予測することはできない。「現実を直視しながら、不可能を要求せよ」という新左翼の往年のスローガンは、手直しが必要だ。「現実を直視しながら、不可能を予期せよ」と。これが、わたしの手法の軸となる考え方である。別のさらなる見地から、この考え方は地政学と呼ばれる。
 地政学は「国際関係論」のもったいぶった呼び方ではない。地政学とは、世界について考え、将来のできごとを予測するための手法をいう。経済学には「見えざる手」という概念がある。人間の利己的なその場しのぎの行動が、アダム・スミスの言う「国の富」を増大させるという考え方だ。地政学は見えざる手の概念を、国家を始めとする国際舞台の主体の行動に当てはめる。国家やその指導者たちによる短期的な自己利益の追求が、国富とはいかないまでも、少なくとも予測可能な行動をもたらすため、結果として将来の国際システムのあり方が予測可能になると考える。
 地政学も経済学も、行動主体が合理的であるという前提をとる。つまり、少なくとも自らの短期的な自己利益を認識しているという意味での「合理的」である。かれらは合理的な主体であるがゆえに、現実に取り得る選択肢は限られる。人間や国家は全体としてみれば、完璧とは行かないまでも、少なくともランダムではない方法で自己利益を追求するものと考えられる。チェスのゲームを例にとてみよう。素人目には、チェスの初手は20通りの指し方があるように思われる。だが実際に指される手はそれよりずっと少ない。ほとんどの手が、すぐに敗北をもたらす悪手だからだ。チェスがうまくなればなるほど、自分の選択肢を深く理解するため、現実に指せる手は少なくなる。つまりチェスの名手であればあるほど、次の一手を予測しやすいのだ。名人は絶対的な正確さで、予測通りの手を打ってくる――思いもよらない、目の覚めるような一撃までは。

【『100年予測 世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図』 ジョージ・フリードマン/櫻井祐子訳(早川書房、2009年)】

 

 ジョージ・フリードマンは、アメリカは経済、軍事、政治のいずれをとっても世界最強の国で、そのパワーに本当の意味で挑戦できる国などいない、と述べ、さらに、「アメリカの支配はまだ始まったばかりであり、二十一世紀はアメリカの世紀になる」と予測している。
 

 読んでいただけると判ると思うが、フリードマンのこの説は非常に説得力がある。私は別に世界情勢や政治経済学、その他に詳しくも何とも無いが、この意見を読んで意外に感じたが、おそらく正しいだろうとも思った。
 

 この書にはさらに信じがたいような予測も提示されている。
 

 2050年に、トルコ・日本連合がアメリカと戦争をするというのである。
 

 アメリカに締め付けられてやむなく戦争に向かわざるをえなくなるというのがフリードマンの予測の大まかな根拠であるが、荒唐無稽なSFとしても少し現実味が無いと言えるだろう。
 しかし、本書を順に読み進めていくとその荒唐無稽が、現実味を帯びたリアル世界の洞察と思えてくる。
 

 予測が正しいかどうかは別としても(こんな事を書くと著者には怒られそうだが)、文句なしで楽しめるエンターテイナー作品としてお勧めの書である。

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